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アセルカデ

中絶をめぐるQ&A

  • #もっと安全な中絶をアクション(ASAJ)は、中絶を勧めているのでしょうか? 中絶に賛成なんですか?
    A. 私たちは、すべての人がいつ産むか、産まないか、何人産むかを決められるリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(RHR)を人が生きていくうえで欠かせないものだと捉え、この権利をすべての人が享受できるようにするめには、社会や医療のしくみをもっと整える必要があると考えています。そしてその上で、必要としている人に安全な中絶が提供されることを求めています。 さらに、必要としている人に安全な中絶が提供されるために、日本の刑法の中にある堕胎罪規定の廃止、母体保護法の配偶者同意の撤廃などを求めています。また、中絶へのネガティブなイメージによって中絶ケアの改善が遅れがちな現状を踏まえ、中絶をめぐるイメージや言葉の刷新にも取り組んでいます。 私たちの取り組みはWHOの勧告とも一致しています。WHOは「全ての人々が可能な限り最良の健康状態を達成すること」を目的としています。その中には流産も人工妊娠中絶も含まれています。WHOのグローバル・リプロダクティブ・ヘルス戦略では、危険な中絶の撲滅を優先事項として掲げていましたが、経口中絶薬が開発されたことによって、質の高い中絶ケアが届けられるようになりました。私たちは、日本においても世界標準の方法で中絶ケアを受けられるように要望しています。 また、WHOは中絶ケアの提供における「法律と政策」についても勧告を出しています。質の高い中絶ケアを確実に実施・維持するために整備されるべきこと、または除かれるべき法律や政策について述べています。そこでは、中絶を犯罪化すること、第三者による中絶の承認は除かれるべきことだとされています。  
  • 中絶薬ってどんな薬?
    A. 通常、ミフェプリストン1錠とミソプロストール4錠をセットにしたものが「(経口)中絶薬」と呼ばれています。ミフェプリストンを飲むと妊娠継続に必要なホルモンが抑えられ、妊娠11週までの初期であれば95%の妊娠が終了します。その後、1日ほど経ってからミソプロストール4錠を口の中で溶かすようにして服用することで、子宮が収縮し、妊娠組織がはがれて膣から外に排出されます。妊娠週数によっては、普段の月経よりかなり重い出血や月経痛のようなものが生じることもあります。 中絶薬は1980年代にフランスで開発された薬で、世界では2021年時点で82ヶ国・地域で承認されています。日本でもようやく2021年12月にイギリスの製薬会社ラインファーマから中絶薬の承認申請が出され、2023年3月現在、厚生労働省で承認に向け検討中です。2023年2月には承認の可否をめぐるパブリックコメントも募集されました。 なお、ミソプロストールは胃潰瘍の薬としてすでに日本でも認可されていますが、中絶のために処方することは認められていません。一方、日本のようにミフェプリストンが認可されていない国でも、ミソプロストールのみを使って中絶を行う服用法が使われることがあります。
  • 中絶の配偶者同意を廃止にしたら、胎児の父親の権利はどうなるのでしょうか?
    A. 生物学的に胎児の父親(精子提供者)であっても、妊娠した人の意思に反して妊娠を継続させたり、出産させたりするとしたら、妊娠した人は奴隷状態に置かれることになります。これは妊娠した人への深刻な人権侵害です。 2023年3月現在、母体保護法の条文に基づき、中絶を求める人には配偶者同意が求められています。「同意」という言葉には賛同を「添える」というニュアンスがありますが、実際は本人が中絶を望んでいても配偶者の同意がなければ中絶できないので、配偶者は妊娠を継続させるかどうかの決定権を持っているのと同じです。私たち (ASAJ) は、母体保護法じたいを改正しなくてはならないと考えています。 2022年に公表されたWHOの「中絶ケア ガイドライン」にはこうあります。 〔妊娠した〕本人以外のいかなる個人、団体または機関の承認の必要なく、女性、女子、その他妊娠した人の希望に応じて中絶できるようにすることを推奨する。 中絶の意思決定に親やパートナーが関わることは、女性、女子、その他妊娠した人を支援し援助することになるが、これは中絶する本人の価値観や希望に基づいていなければならず、第三者の承認の要件によって押し付けられるものではない。 出典 WHO 2022.3.8 Abortion care guideline https://www.who.int/publications/i/item/9789240039483 WHO「中絶ケア ガイドライン エグゼクティブサマリー」翻訳 2022.9.28 (翻訳:リプラ、監訳:日本助産学会) https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/352342/9789240045163-jpn.pdf
  • 妊娠は二人の共同作業の結果、共同責任だから、中絶も二人の意思で決めるべきでは?(だからパートナーの同意も必要では?)
    A. 私たち(ASAJ)では、妊娠とは妊娠した人の身体に生じるできごとであり、性行為に関わった人たちの意見が一致しない場合には、妊娠した人の意見が優先されるべきだと考えています。
  • 中絶が簡単にできるようになったら、安易な中絶が増えるのでは?
    A. あなたの考える「安易」な中絶とはどのようなものでしょうか? もし「妊娠の可能性があることを知りながら、避妊しないでセックスする無責任な人が増える」と心配しているのであれば、セックスと妊娠の関係、避妊の方法と必要性、性的同意の重要性などについて、人権教育も含めたかたちで学ぶことのできる「包括的性教育」の充実が先決かもしれません。また、中絶ケアの中でその人にあった避妊法の選択ができるよう適切なアドバイスを受けられることも大切です。 中絶を必要とする人を「無責任」と決めつけるのでなく、中絶を必要とする人が安全な中絶にアクセスできるようにすることが、真に人道的であり、女性差別撤廃条約に添うことにもなるのです。
  • 堕胎罪があることで、安易なセックス、安易な中絶の歯止めになっているのでは? 
    A. ルーマニアのチャウシェスク政権は人口を増加させるため、1975年から89年まで中絶と避妊を厳しく取り締まりました。しかし、産み育てられない女性たちは、違法で危険な闇堕胎に頼るしかなくなり、人口は増えず、結果的に女性の死亡率が急上昇し、捨て子も増えたことが知られています。この教訓として、中絶を禁止しても人々の性行動を変えず、女性の健康や生命を犠牲にするだけだと世界では考えられています。 中絶ケアを可能にするために必要なのは、刑事罰を置くことではなく、支持的な法律と政策の枠組みによって人権が尊重されることです。 2022年3月にWHOが公表した中絶ケアガイドラインには、「中絶の完全な非犯罪化を推奨する」とあります。 ・非犯罪化とは、中絶をすべての刑法から排除し、中絶に他の刑事犯罪(殺人、傷害致死など)を適用せず、全ての関係者に対して、中絶をすること、中絶を支援すること、中絶に関する情報を提供すること、中絶を提供することに刑事罰が課せられないことを保障することである。 ・非犯罪化することで、自然流産した人が治療を受ける際に、違法な中絶の疑いをかけられないようにすることができる。 ・中絶の非犯罪化は、女性、女子、その他妊娠した人が、中絶を強制または強要されるリスクにさらされやすくするものではない。中絶の強制や強要は、非同意的な介入であり、深刻な暴行にあたるものである。 出典 WHO「中絶ケア ガイドライン エグゼクティブサマリー」翻訳 2022.9.28 (翻訳:リプラ、監訳:日本助産学会) https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/352342/9789240045163-jpn.pdf WHO 2022.3.8 Abortion care guideline
  • 現状では母体保護法で中絶ができるのだから、わざわざ堕胎罪の廃止を要求する必要ないのでは?
    A. 日本には中絶に関して刑法堕胎罪と母体保護法(旧優生保護法)という二つの法律があります。堕胎罪はいまから100年以上前につくられた刑法の中の規定で、基本的に中絶を犯罪とみなし、女性と医師を処罰の対象にしています。女性が自分の意思で自ら中絶した場合でも「1年以下の懲役に処する」と定められています。 母体保護法は堕胎罪を前提としながら、一定の条件を満たせば中絶しても堕胎罪に問われないことを定めた法律で、中絶はあくまで「医師の認定による」ことが原則です。堕胎罪に問われない条件は二つあります。①妊娠を続ける、または出産することが「身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれ」のある場合と、②レイプされて妊娠した場合です。現在日本の中絶のほとんどは①によって、医師の認定により合法的に行われています。 したがって堕胎罪で逮捕されることはめったにありません。堕胎罪のことを知らない人も多いのではないでしょうか。しかし中絶はあくまで条件付きで認められているにすぎません。条件がせばめられれば、堕胎罪が適用されることもありえます。 実際に1970年代と1980年代のはじめに、法律(当時は優生保護法)を「改正」し、条件をきびしくして中絶を取り締まろうという動きが、一部の国会議員とその支持母体である宗教団体から起きました。その法案が成立すればほとんどの中絶は堕胎罪で処罰されることになります。そのため、女性を中心とする「改正」反対運動が全国に広がりました。当時のメディアもこの問題を大きく取り上げ、与党(自民党)のなかからも慎重意見が出て、「改正」案はかろうじて阻止されました。しかし、堕胎罪がある以上、いつまた同じような「改正」案が出てくるかわかりません。ですから堕胎罪が残っているのは大問題なのです。 堕胎罪の212条は妊娠した女性自身が自ら中絶することを罰していますが、ほかの条項では医師など手術をした人も処罰の対象になっており、結果として中絶ができないようになっています。妊娠した女性には、いつ何人子どもを産むか産まないかを選び決定する権利(リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)があり、産まない選択を否定している刑法堕胎罪は、明らかにリプロダクティブ・ヘルス&ライツを侵害するもので、廃止されるべきと私たちは考えています。ただし、妊娠した本人の意思に反して行われる「不同意堕胎」は、違法行為として処罰(たとえば傷害罪を適用)する必要がありますが、この点についてはさらに議論を深めなければいけません。 日本も締結している女性差別撤廃条約について、締結国の条約がどれだけ守られているかを監視している国連女性差別撤廃委員会も、刑法堕胎罪と母体保護法は女性差別に当たるとして、日本政府に対し法の見直しを再三勧告していますが、日本政府はいまだに何も対応しておらず、中絶に関する二つの法律はそのまま残されています。
  • 緊急避妊薬が簡単に入手できたら、避妊なしの安易なセックスが増えるのでは? (避妊を嫌がる男性が喜び、女性の負担が増えるのでは?)
    妊娠は精子と卵子が受精することによって成立します。したがって避妊はカップルの両者がすることであり、決して片方だけがすればよいものではないのです。しかし、「子宮」をもたない側は、避妊を「安易」に考えてコンドームの装着を嫌がり、避妊してもらえず意図しない妊娠をしたという人が現に存在します。 セックスは人間のもっとも親密なコミュニケーションという捉え方があります。セックスをおたがいを大切にする人間関係との一部とみなす性教育が必要です。日本の性教育では妊娠・出産に重点が置かれがちですが、人間関係としてのセックスという考えや、避妊・中絶なども含めた公正で包括的な性教育を充実させる必要があります。 まず妊娠を100%回避できる避妊法はないことを知っておく必要があります。コンドームの避妊失敗率は15%、低用量ピルでは8%といわれています(一般的な使用法の場合)。もしも避妊せずセックスした場合に直ちに利用してほしいのは緊急避妊薬です。これは性交後72時間以内に飲めば妊娠を約80%防げる薬で、飲むタイミングが早ければ早いほど効果が高いです。 緊急避妊薬は日本でも認可はされていますが、海外と異なり、医療機関を受                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        診しなければ処方されません。カップルが意図しない妊娠を避けようとしても緊急避妊薬が入手できず、時間が経過してしまい避妊効果が失われるのでは意味がありません。ただ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を考慮し、2020年4月に、厚生労働省が緊急避妊薬のオンライン診療を時限的・特例的に認めました。また、緊急避妊薬へのアクセス改善を求める要望書が市民から出されています。 (なお、海外では性交後120時間以内に飲めば効果のある緊急避妊薬も使われていますが、日本では未認可です。)
  • 中絶は生命の軽視では?
    A. 議論を深めるために一緒に考えてみましょう。ご自分の「中絶」観を振り返ってみてください。「中絶」を週数の進んだ「赤ちゃん同様の胎児を殺していること」と捉えていませんか。また、いったん妊娠したら、必ず「人間」に育っていくのだとも考えていませんか。実際には、妊娠初期の流産は15 %程度生じています。現在、日本の中絶の95%が妊娠12週までに行われており、そのうち55%は妊娠7週までに行われています。 妊娠プロセスが始まると、妊娠14~15週頃までに胎盤が形成されていきますが、日本の中絶の95%は胎盤がまだ完成しない妊娠12週未満で行われています。胎盤ができあがる前はまだ不安定な状態で、出産を望んでいても流産してしまうこともある、そんな段階です。 さらに妊娠8週までは「胎嚢」と呼ばれる袋にくるまれた「胎芽」と呼ばれる状態で、産婦人科学では「胎児」と呼ばないほど小さい存在です。まだ他の哺乳類の胎児とほとんど見分けがつかないくらい未分化で未熟な状態です。医師によっては妊娠10週くらいまで胎芽と呼んでいる人もいます。 そのような妊娠早期の中絶に対し、日本では8割の医師が搔爬と呼ばれる手術を用いています。WHOの推奨する経口中絶薬か吸引法なら、ごく早期の妊娠に用いることが可能ですが、搔爬法であればある程度週数が経つのを待たねばなりません。また、搔爬法は術式としてもリスクがあり、WHOは旧式だとして推奨していません。 さらに何らかの事情で中期中絶に至った当事者は、無麻酔で胎児を分娩する方法を強制されていますが、これも海外では考えられない非人道的な医療です。妊娠初期でも中期でも、中絶の当事者に対するインフォームド・チョイスも心のケアもほぼ皆無の状態です。 日本の中絶で軽視されているのは、むしろ当事者の健康と権利、そして人間としての尊厳の方ではないでしょうか。
  • 中絶されようとしているお腹の中の赤ちゃんが逃げているビデオを見たことがあるけど...?
    A. その種のもので有名なのは、1970年代のアメリカで女性のプライバシー権に基づく中絶合法化が行われた際に、中絶に反対する人々が流産した赤ん坊を使って作った偽物の中絶手術のビデオです。当時の技術をもってして、お腹の中のどこにカメラを据えたらそんな映像が撮れるだろうと考えれば、明らかにお腹の外に作られた人工的なセッティングであったことが理解できるはずです。 このビデオは、「胎児が可哀想、中絶は残酷で悪いもの」というイメージを植え付けるために作られたプロパガンダで、一部の性教育担当者やカトリック系の学校などを通じて日本にも流布しているようです。科学的な事実とは異なっています。
  • 中絶と堕胎はどう違うのでしょうか?
    A. 中絶は人工妊娠中絶の略語で、母体保護法(旧優生保護法)によって刑法堕胎罪の例外とされた(法律用語で言えば「違法性が阻却された」)合法的中絶について用いられる言葉です。 堕胎は刑法上の規定にある「堕胎罪」に由来する名称で、非合法中絶に用いられる言葉です。
  • アボーションとは中絶のことですか?
    A. 英語のabortionには、人工妊娠中絶だけでなく自然流産が含まれています。 なお包括的なアボーションケアでは、中絶の管理には人工妊娠中絶、自然流産に関連するケア、中絶後ケアなどを含みます。
  • 中絶と流産とはどう違うのでしょうか?
    A. 妊娠22週未満に妊娠が終わるのを総称して「流産」と言います。ここでいう「妊娠22週未満」とは、胎児が胎外生活を送ることが難しいぎりぎりの時期です。 妊娠22週未満までに人工的に妊娠を終わらせるのが「人工流産」であり、「人工妊娠中絶」とも呼びます。これが一般に言う「中絶」にあたります。 これに対し、自然に流産兆候である出血や腹痛等が生じ、子宮内容が排出されたり子宮内で胎児が死亡する状態を「自然流産」といいます。一般に「流産」というと、こちらのみを指すことが多いでしょう。妊娠の15%が自然流産に至ります。流産の場合、妊娠12週未満を早期流産、12週以降22未満を後期流産と分類します。流産の8割以上が早期流産です。 経口中絶薬は、妊娠12週未満の人工妊娠中絶時と、自然流産でも稽留流産であった場合に用いられるでしょう。稽留流産とは、妊婦にとっては無症状ですが、胎児は死亡しており、子宮内容もそのまま残っている状態です。

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