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日本産婦人科医会 と日本産科婦人科学会へ公開質問状を送付

2022年4月26日、日本産婦人科医会と日本産科婦人科学会に、母体保護法の配偶者同意要件や刑法堕胎罪の廃止について、外科的中絶の手法や内科的中絶の導入についての公開質問状を送付しました。

回答期限2022年5月末まで。回答の有無、その内容はHPでお知らせします。

 

日本産婦人科医会 会長 木下勝之 様 日本産科婦人科学会 理事長 木村 正 様

公開質問状

#もっと安全な中絶をアクション safeabortion2020@gmail.com


 私たち「#もっと安全な中絶をアクション」は、安全で公正な中絶医療の提供を求めて活動している市民団体です。  経口中絶薬の承認申請が行われ、本年内にも承認される可能性があると言われている今、母体保護法指定医師団体である日本産科婦人科医会と日本の産婦人科専門医師育成を担う日本産科婦人科学会にご見解をお伺いしたく思います。

 2022年3月に、WHOがこれまでのすべての推奨事項に置き換わる新しい『中絶ケア・ガイドライン』*1を公表したことはご存知のことと思います。このガイドラインでは、中絶ケアを次のように定義しています。  中絶ケアの質は、この中絶医療ガイドラインの根幹をなすものです。ケアの質には複数の要素が含まれます。それは、効果的、効率的、アクセス可能、受容可能/患者中心、公平かつ安全なケアと定義されています。効果的なケアとは、個人と地域社会の健康を改善し、その人のニーズに応える、エビデンスに基づくケアを提供することである。効率的なケアは、資源の使用を最適化し、無駄を最小限に抑える。質の高い中絶ケアはまた、アクセスしやすく(タイムリーに、手頃な価格で、地理的に到達可能で、医療ニーズに適したスキルと資源がある環境で提供され)、かつ(個々のサービス利用者の希望や価値観、地域社会の文化に照らして)受容可能でなければならない。中絶ケアへのアクセスが公平であること、また、ケアを求める個人の特性、例えば性別、人種、宗教、民族、社会経済的地位、教育、障がいの有無、あるいは国内の地理的位置によって、ケアの質が変わらないことが必須である。

 最後に、質の高い中絶ケアとは、それが安全に提供され、サービス利用者に対するあらゆるリスクや害を最小限に抑えることを意味する。(xixより試訳)

World Health Organization (WHO) (2022) Abortion Care Guideline https://www.who.int/publications/i/item/9789240039483  こうした『中絶ケア・ガイドライン』の記述に照らすと、日本の中絶には以下の4つの問題があります。

問題1 患者中心のケア(patient centered care)の観点から

日本の母体保護法には配偶者同意要件があり、女性は配偶者(事実婚含む)の同意がなければ中絶できません。影響は配偶者のいない未婚女性にも及んでおり、相手男性の同意を得られないケースで生後0日児遺棄事件なども起きています。日本の中絶は女性中心でなく、男性の意向が中心に据えられています。

問題2 質の高い中絶ケア(quality of abortion care)を妨げる法制度について

妊娠葛藤を抱える女性に必要なのは質の高いケアと社会心理的支援です。しかし刑法堕胎罪により中絶が犯罪と位置づけられていることは、専門家にケアの改善をためらわせる一因になってきたように思われます。女性に与えるスティグマの大きさも見逃せません。

また、より安全で女性に受け入れられやすい(acceptable)方法があるにも関わらず、日本で旧い術式が維持され続けてきた法的・制度的背景も検証される必要があります。

問題3 中絶手法のアップデートについて

今回のガイドラインでは、搔爬法は、女性に痛みと苦痛を与え、健康に対する権利など多くの人権と相容れないものとして使用しないことを推奨すると記されています。

また、中絶手術時の疼痛管理として、新たに傍頚管ブロック(Paracervical block)が推奨され、日本で広く行われている全身麻酔(general anaesthesia)は推奨されないことも明記されました。

問題4 中絶薬のアクセスしやすい(accessible)導入について

 アクセスしやすい中絶とは、女性の希望や受け入れやすさに応じた選択肢が提示されることです。例えば、費用負担の軽減、24時間体制の処方や診療、クリニックに出向けない環境にある女性(遠隔地に居住、DV被害者、交通弱者等)のためのオンライン処方、女性が十分な説明を受けた上での自宅での経口中絶薬服用(妊娠初期の自己管理中絶)、手続き的障壁(第三者の同意要件、自己堕胎罪)の廃止、格差是正(居住地や使用言語による格差をなくすため、訓練を受けた医師など複数の専門職種を各地で育成)などです。これらは日本では実現していません。

私たちは日本においてもWHOの『中絶ケア・ガイドライン』に則った中絶ケアが行われることを望んでおり、そのためには上記4つの問題点の改善が欠かせません。医会・学会におかれましては、今後これらの問題についてどのように対応するお考えであるのか、お聞かせいただければと思います。具体的な質問は下記です。

質問1(患者中心のケア)

中絶を女性の自己決定に基づく医療にするために、母体保護法の配偶者同意要件を廃止すべきとお考えでしょうか?

質問2(法制度)

 中絶した女性を犯罪者として裁く刑法堕胎罪を廃止すべきとお考えでしょうか。  また、旧い術式を維持し続けた母体保護法の指定医師制度の意義、指定医師をはじめとする産婦人科医師の責任をどのようにお考えでしょうか?

質問3(外科的中絶の手法)

日本の外科的中絶が、搔爬法から吸引法に置き換わる時期の見通しをお聞かせください。 また、中期中絶を含めて、中絶時の麻酔法がガイドラインに添うものになるよう見直される時期の見通しも教えてください。

質問4(内科的中絶の導入)

「質の高い中絶ケア」実現のためには、諸外国のように、中絶薬を手ごろな価格で提供し、遠隔医療も可能にする必要があります。医師をはじめ複数の専門職種が処方のための訓練を受ける必要もあります。これらに対し、日本にはどのような障壁があるとお考えでしょうか?

回答は5月末までに以下のアドレスにお願いします。 safeabortion2020@gmail.com なおこの質問状およびご回答の有無とその内容は、当会のサイトで公開する予定です。

以上

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