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経口中絶薬に関する要望書

2021年12月22日、イギリスの製薬会社ラインファーマが厚生労働省に 、経口中絶薬の製造販売の承認申請を行いました。当会ではこれをうけ、同日付けで厚生労働省ほか関係省庁に、中絶薬の早期承認と世界標準に合わせた経口中絶薬の運用、抜本的に法制度を見直し女性の性と生殖に関する法整備を早急に求める要望書を提出しました。

 

厚生労働大臣 後藤 茂之殿 法務大臣 古川 禎久殿 内閣府男女共同参画特命担当大臣 野田聖子様


経口中絶薬に関する要望書

#もっと安全な中絶をアクション safeabortion2020@gmail.com


私たちは、リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康&権利)実現のため、2020年9月国際セーフアボーションデーをきっかけに活動を開始したネットワークです。

経口中絶薬に関して、私たちは、以下の三点を要望します。

1. 速やかに経口中絶薬の安全性と有効性を確認し薬事承認をしてください。   その後、適正に使用すれば安全であることを広く周知してください。

2.WHO が提言する世界標準に合わせた経口中絶薬の運用をしてください。

  イ.必要とする人が利用できるような制度設計、安価な値段設定と公的補助   ロ.通院や入院を必須としない利用方法(オンライン診療や自宅での服用も選べる)   ハ.中絶薬を扱える職種の拡大(医師のほか助産師、看護師なども処方できる) 

3.リプロダクティブ・ヘルス&ライツの観点から、刑法堕胎罪や母体保護法を見直し、女性の性と生殖に関する法整備を早急に行ってください。上記2を実現するためには不可欠です。

補足説明

 経口中絶薬は世界 80 ヶ国以上で使われており、その安全性は広く認められています(1)。WHO も妊娠初期の中絶は、経口中絶薬か吸引法でなされるべきであると勧めています(2)。

 国内の治験における中絶薬による中絶の成功率は、報道によれば 93%(24 時間以内)です が、海外のエビデンスでは 98%以上です(3)。

 中絶を必要とするすべての人が、WHO のガイドラインに則った安全な中絶方法にたどり着ける ことが重要です。厚労省は、経口中絶薬および他の方法による中絶について、正確な情報を、関 連医学会・医会・メディアに周知してください。

 コロナ下の現在、世界では経口中絶薬が遠隔医療により処方されています(4)。手術や通院が ままならない中、然るべき機関に連絡すると自宅に経口中絶薬が郵送され、女性が自己管理のも とに中絶する方法です。遠隔処方による中絶により、望まない妊娠期間が短くなり、合併症も減り ました(5)。 イギリスでは初期中絶では 8 割以上の女性が経口中絶薬による中絶を選び、その 方法に満足していることもわかっています(5)。国際産婦人科連合(FIGO)も、この方法の安全性は 確認されたのでコロナの終息後も提供されるべきだと発表しました(6)。

 WHO は中絶薬の処方は医師のみならず助産師や看護師もしくは准看護師にもできると明記し ています(7)。 もし日本において、経口中絶薬を指定医師のみが処方でき、服用後の宿泊入院に よる観察や、流産完了を確認する超音波検査があたかも不可欠のように提示されるとすれば、そ れはスタンダード(世界標準)ではない誤った情報です。

 根拠のない不要な医療行為は、女性の経済的身体的精神的負担になるだけでなく、中絶医療 へのアクセスも妨げます。エビデンスのない処置を課すような倫理に反する医療を無くし、国民の 健康を守ってください。

 経口中絶薬は、国によっては女性の経済的負担なしで手に入ります(8)。またそのような国では 避妊、周産期医療費用へも公費負担が行われています。日本の中絶は自費診療のため、経口中 絶薬による中絶が法外な費用になることが危惧されます。避妊、中絶へのアクセスが困難なこと で、生後 0 日児遺棄事件や、女性の自殺につながるケースが後を絶ちません。避妊・中絶・周産 期医療はリプロダクティブ・ヘルス&ライツに必須の医療です。経済力の違いによって不平等が生 じる現状はリプロダクティブ・ヘルス&ライツを阻害しています。経口中絶薬を含む中絶・避妊の費 用の公的補助は、女性を含むすべての人の性と生殖の健康と権利を国が尊重し守ることにつな がります。

参考資料

International Federation of Gynaecology and Obstetrics (FIGO) (2021) Access to Medical Abortion and Self-Managed Abortion : FIGO and Partners Share Key Insights with the United Nations https://www.figo.org/news/access-medical-abortion-and-self-managed-abortion

(2)WHO (2012) 『安全な中絶 医療システムのための技術及び政策の手引き 第 2 版』 https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/70914/9789241548434_jpn.pdf;jsessionid

(3)「経口中絶薬承認申請へ」 毎日新聞 2021 年 4 月 21 日朝刊

National Institute of Health and Care Excellence (2019) Abortion care [G] Expulsion at home for early medical abortion NICE guideline NG140 Evidence reviews

Bateson D G Lohr P A Norman W V (2020) The impact of COVID-19 on contraception and abortion care policy and practice: experiences from selected countries British Medical Journal (BMJ) Sexual and Reproductive Health vol 46 (4) https://srh.bmj.com/content/familyplanning/46/4/241.full.pdf

(5) Jordan A Parsonsa Elizabeth Chloe Romanisb(2021) ‘2020 developments in the provision of early medical abortion by telemedicine in the UK’ https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168851020302785

(7) WHO (2015) Health worker roles in providing safe abortion care and post-abortion contraception http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/181041/9789241549264_eng.pdf?sequence=1

(8)Daniel Grossman, Kate Grindlay, Bridgit Burns(2016) ‘Public funding for abortion where broadly legal’

Lavelanet A F Major E Govender V (2020) Global Abortion Policies Database: a Descriptive Analysis of Financial Coverage for Abortion Care Current Obstetrics and Gynecology Reports 9 p105–111

Grossman D Grindlay K Burns B (2016) Public funding for aobrtion where broadly legal Contraception vol 94 issue 5 p453-460

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